仕事なんかで地獄に落ちる必要なんてない。

-2021年02月09日-

自ら命を絶つ方が増えています。

私も大切な人を自死で亡くして30年。

「あの時こうすれば…」という後悔を、これから何ができるだろう、に変えて日々小さなことをコツコツと積み重ねている宮崎在住のフリーランスの保健師、柏田ひろみです。

先日Facebookで桜井栄一さんの投稿をみて、とても心に響きました。

桜井さんご自身もその苦しさを経験していらっしゃることに加え、お友達の訃報に感じることを書いてくださっています。

許可を頂いたのでこちらにもシェアさせて頂きます。

 

*****(以下、桜井さんの許可をいただいて記事転載)

命より大切なものはない。
命より重いものはない。
命より…。

今朝届いた衝撃的なLINEメッセージ。
知人が亡くなった報告だった。

数年前、とある場所で偶然再会した時も仕事のことで悩まれていた。転職したいとこぼしていた。
一社、ツテのある会社に紹介して斡旋したこともあった。
「当面、今の場所で頑張るわ。」
そんな会話をした記憶が蘇る。

家族を支える柱として、子を持つ父親として、
男にしか分からない責任感、プライドがある。
弱音を吐けない、吐いちゃいけないプレッシャーもある。
自分なりの考えや意見を持ち、義理や道理を大切にする信念を持たれた方だった。

当人の苦しみは、同じような境遇に直面したことがない人間には分からない。
男にとって仕事は、自分の存在意義を問う場であり、価値をはかる場でもある。女とは違うと言っているんじゃない。理屈説明をする必要なんて今はどうでもいい。

社会全体が、未だに、男にとって仕事は戦うべき主戦場という常識が根強くある。
その戦場で存在意義が分からなくなり、自分の価値に自信を無くし、未来が見えなくなる恐怖は、体験した者にしか分からないのだから。

どれほど辛い思いをしていたんだろう。
どんなに苦しかったんだろう。
泣きたくても泣ける場所もなく、
弱くても強がらなければ生きていけない葛藤。

6年前の自分を思い出す。
苦しくて、胸が重くて、頑張らなきゃと分かっていても頑張れない苦しさ。
自分どうした!?
って毎日問うても何の答えも見つからない、悔しさ、切なさ。
ここでは書けない幾つかのプレッシャー。背負っている幾つもの看板から逃げられない、譲れない信念があった。自分が負ければ、背負っている看板に傷をつける。
絶対にあり得ない!
それらが周りから見られ、思われているイメージ、期待から外れるわけにはいかない重責となり、みじめな自分を認めたくはない強がりなども複雑に絡み合い、自分で自分を追い込んでいった。

本当なら、藁でも何でも掴み、誰でもいい、何でもいいから助けてほしい、逃げさせてほしいと命の底で悲鳴をあげていたように思う。
泣ける場所も一人でいられる空間だけだった。
子どもたちに見せれるわけがないじゃないか。
ましてや、他人になんて。。

そんな中、一度だけ、一人涙を流して背を震わせていた時、当時小学2年生の娘に見られてしまったことがあった。部屋に入ってきたことにすら気付いていなかった。
何にもなかったように平常ぶってごまかしたけど、翌日の夜、遅く帰宅したときにテーブルに小さな手紙が置いてあった。
辿々しい文字で。

ーーーーーー
いつもわたしたちより朝早く起きて
仕事に行き、いつも私たちより夜遅く
に帰ってきて寝てるパパ。わたしたち
のためにありがとう。
○○○より

ーーーーーー

娘は小さいながら、娘なりに真剣に僕を励ましたかったのだろうと思う。
涙が流れた。負けるわけにはいかないよな、子どもたちの見本にならなきゃならいよな、、

それからも辛く苦しい毎日だった。
もがきながら、必死に、砂を噛み、岩盤に爪をたてながら、悩みのど真ん中に自分を曝け出し、信頼する人たちに相談を続けていった。
 「そんなに全てを一人で背負わなくても
  いいんだよ。軽くなっていいんだよ。」
自分をよく知ってくれていた方からの励ましには涙しかなかった。
何のために!?何のために!?
何がこの試練を自分に与えているのか!?
何を教えようとしているんだ!!
逃げたい、いますぐ逃げたい、、、

そんな葛藤、苦しみが4ヶ月間続いた。
自信は全て失われた。
骨抜きにされるくらい悩んだ。
自分を追い込み続けた。

すがるように尊敬する方の書籍や詩集を読み漁っては泣いた。
そして気づいた。

何のためになんかじゃない。
誰のために俺はあるんだ!?
誰に応えるためにいるんだ!?
と、心の底から気づかされた。
人は、何のためにでは困難の泥沼から脱出できない。誰かのためにと腹をくくるまで感じれたときに脱出できる。強くなれるということを知った。
また、誰かのためにという使命を自覚した瞬間から変われるのだと。人の優しさ、温もり、真剣に生きる人の気持ち、強い人の背景にある何かを感じ取れるようになるのだと。

いま社会問題にまでなって大ブレイクしている漫画、そして映画化された『鬼滅の刃』。
主人公の炭治郎をはじめ、妹の禰豆子、柱たちそれぞれが皆、何かのためにではなく、じつは、誰かのために戦っていることに気づいた人もいるでしょう。

何かのためにとは、
金とか名誉とか立場とか、プライドとか、コンプレックスとか、自分の欲望が命の中心になっていくと、いとも簡単に人は冷酷にもなれるし、心が知らず知らずに冷たくなっていく。人の優しさに気づかず、大切なものを見失って暴走し出す。
という悲劇を産むものだ。

だけど、あまりにも悲しい。
知人の死はショックだった。

今だから言えるけど、仕事でなんて地獄に落ちる必要なんてない。たかだか仕事でなんて自分を見失ってほしくない。仕事で失敗しても、どん底に落ちても、会社を潰したとしても、心が倒れなければ必ず蘇生できる。

そしてお願いだから、一人で全てを抱えて苦しまないでほしい。格好悪く泣きながらでも誰かに頼ってほしい。お願いだから。

そう強く思う。

*****(転載終わり)

こちらの記事を読んで、桜井さんのお腹の底からのメッセージだと感じました。

このメッセージを必要としている方に届きますように。